2007年6月4日月曜日

Internet事情

Internet事情

以下の文章はある日本のNGOから依頼されて書いた文章に少し手を加えたものです。

カンボジアのインターネット事情

1.コンピュータ小売店
プノンペンはカンボジアの首都であり、経済発展しているベトナムのホーチミンシティからバスで半日の距離である。このため、コンピュータの製品や部品は半年から1年遅れぐらいで新製品が店頭に並び、価格は秋葉原に近い。コンピュータ小売店も中古専門店も含めて数多くあるが、その知識と技術のレベル、サービスは日本の郊外型大量販売店並である。日本であればメーカからのサポートに依存しているため商売が成り立つが、プノンペンではメーカからのサービスはない。1年補償や3年補償を訴っている小売店があるが、実際にはさまざまな理由を付けて補償されない場合が多い。

2.Internet
 2.1 Internet Cafe
すでに無線LANによるサービスは空港などの大きな施設だけでなく、巷のInternet Cafeでも提供されている。このInternet CafeがプノンペンでのInternet事業展開のキーになると考えられる。Internet Cafeはプノンペン市内だけでなく市から離れた郊外にもあるが、その多くがInternetサービスの提供だけでなく国際電話サービスも提供している。

Internet CafeでもInternetの通信速度は体感的にISDNよりは早いといった程度であるが、2007年頃から高速が売り物のInternet CafeができCDサイズのデータを1時間ほどで入手できるとのことである。

問題はその金額ある。Intenet Cafeの利用料金は2004年の一時間2000リエル($1=約4000リエル)から2005年末には1500リエルまで下がった。また、短時間の場合には400リエルなどの料金設定もしている。このためか、数多くあるInternet Cafeが土曜や日曜に満席となる。

国際電話も低価格である。比較的低価格とされるInternet電話の料金を比較例として挙げると、日本とカンボジア間でSkypeが1分$0.331(携帯電話$0.299)、Yahoo Messenger(米国版)が$0.19(携帯電話も同額)である。この価格に対してInternet Cafeの国際電話サービスは1分300リエル(約$0.075)で、QoS(通話の品質つまり音質や遅延、音切れなど)もIntenet電話よりも高品質である。

どうようにこれだけの高品質低価格を実現しているのかは不明である。興味深い事実としてInternet CafeにでSkypeの通信を行うと他のInternet利用者の速度が落ちて苦情が出るが、国際電話ではそのような苦情は出ない事がある。

また、前述のようにInternet電話よりもQoSが良い。このため国際電話用に別回線を持っている可能性が考えられる。ただし、原因は不明であるが音声回線のみでデータ回線としての利用はまだのようであり、この点もその理由が不明である。

JICAはODA(政府開発援助)としてファイバー回線や衛星回線に対する資金援助をして、さらにボランティアを送り込んで技術援助をしている。しかし、JICAで支援サポートを行ってきたボランティアによると2005年の時点でその回線はまだまだ細く、光ファイバ回線と衛星回線をあわせても68Mpbsしかない。(*1)

 2.2 個人宅と企業
Internet Cafeが主流で個人宅に導入している例は少ない。プノンペンでは2006年5月の時点で月額$50で重量制限の常時接続サービスが受けられる、ただし夜間と週末には重量制限が解除される。

プノンペンでもっとも積極的にInternetを導入しているホテルに2年間滞在したが、接続状態は不安定で頻繁に通信不能に陥る。他の企業などでは通信不能は日常茶飯事である。このように企業でもIntenetの回線は細い。

 2.3 地方学校特殊な例として、モータバイクを使ったInternetが運営されている地方学校がある。

http://www.firstmilesolutions.com/

技術的には非常に面白く開発途上国への支援として大いに期待できる。このサービスの開始と運営にはいくつかのNGOが関わっているらしいが、その実態は不明である。以下のNGOは直接話したことのあるグループであるが、彼ら自身もその全体像を把握できていない。また、キャッシュフローが不安定で自立できておらず寄付に依存しており、技術の移転もできていない。

Japan Relief for Cambodia/American Assistance for Cambodia他に、UNESCOの職員も関わって、日本の中古PCを輸入して修理後にLinuxをインストールして地方の小学校に配布しているNGOもある。このNGOでは輸入した中古PCをプノンペンで動作検証し必要に応じて修理した後、LinuxとOpen Office、教育用ソフトなどをインストールして、地方の学校に配布している。しかし、地方学校でPCが動かなくなった場合には技術者が居ないため不具合解析もできず、プノンペンに送り返して修理し再度地方に発送している。

この対策として私が派遣されたカンボジア日本友好技術訓練校が期待されている。私がハードウェアとソフトウェアの修復技術の移転するだけでなく、クメール語による教科書を作成し、教員訓練のための授業を二回実施している。この訓練校で地方の教員を訓練し簡単な修理方法と、地方で修理できる問題か否かの切り分けができるようになれば、地方における情報技術の授業は大幅に改善されるはずである。

さらに、複数の故障したPCから一台の正常動作するPCを作るなど、中古PCを活用する技術を学習すればカンボジア内での一つの職業、あるいは産業として確立できる可能性もある。

*1
カンボジアの通信回線は米国式の1.5Mbps単位のT1ではなく、欧州式の2Mbps単位のE1を基本にしている。外国向け回線は総数34本、合計68Mpbs分ある。接続はファイバーケーブルでタイとベトナムに接続し、衛星回線で日本と米国に接続している。2005年頃の各内訳は以下の通り。

タイーカンボジア間:

2Mbpsが8本(内2本はマレーシアへ)

ベトナムーカンボジア間:

2Mbpsが4本

衛星回線:

日本向け2Mbpsが2本
米国向け2Mbpsが20本

0 件のコメント: