2007年6月4日月曜日

クメール語OS

以下の文章はある日本のNGOから依頼されて書いた文章に少し手を加えたものです。

クメール語OS

1. Limon
カンボジアではクメール語が利用されている。コンピュータでクメール語を扱うことは条件付ながら可能であり、クメール語によるDTPも行われている。

現状ではLimonと呼ばれるフォント・セットとその派生品が使用されている。

Limonフォントは現在フランスに在住しているプログラマが作ったとされており、クメール語のフォントを直接キーボーのキーに割り振っている。クメール語の文字は数が多いため、シフトキー、コントロールキーなどの修飾キーを組み合わせて入力することになる。このため、アプリケーションの命令キー・コンビネーションと重複することが多い。LimonフォントはMicrosoft Wordをターゲットにしてキー・コンビネーションを割り振ったものである。他のフォントは同じグリフ(字形)を使用して異なるキー・コンビネーションを持たせている。このため、アプリケーションのショートカットキーの組み合わせと衝突するなど、相互の互換性がなく変換ソフトウェアを使用しなくてはならない。また、Limonフォントのグリフをそのままコピーしているため著作権も問題である。なお、カンボジア政府のWebサイトではLimonフォントを配布している。

http://www.cambodia.gov.kh/unisql1/egov/english/material.list.html

また、日本政府からの要請を受けて調査した報告では市場の70%以上がLimonフォントを使用している。

http://www.o2int.co.jp/cambodia/j/outline/outline.html

なお、Macintosh用のLimonフォントもキー・コンビネーションを替えたものがあり、DTPで実際に使用されている。

2. Unicode
日本ではUnicodeを導入するときにさまざまな問題が発生し、その後遺症は現在も続いている。同様の問題がクメール語Unicodeにも発生している。

Microsoftは独自にこの問題を解決するための新しいOpenTypeフォントを発表した。

http://www.microsoft.com/typography/OpenType%20Dev/khmer/intro.mspx

この新しいOpenTypeフォントは同社の次期OSであるWindows Vistaに搭載されているといわれているが、私はまだ確認していない。このUnicode対応のOpenTypeフォンをWindows XPやLinuxで使用するためのソフトウェアが下記のグループより配布されている。

http://www.forum.org.kh/en/index.shtml

このソフトウェアはLimonのクメール語入力方法とは異なり、日本語のローマ字仮名変換と同じ入力方法を採用している。このため2006年初頭頃から政府や学校関係者に対する講習会を開き、新しい入力方法を広めようとしている。

現在のこのソフトウェアの問題はフォントのデザインである。無償公開されているフォント・セットが二つのみであり、しかも画面上で見ても読みにくい。ましてやDTPに使用できるデザイン品質のフォントがない。Limonフォントでは少なくとも14のグリフ(書体)が事実上無償で配布されており、Apsarasという完成度の高いフォントも販売されている。

この問題の可決方法としてはWindows Vistaがクメール語を正式にサポートし、多くのフォントが出回るまで待つか、独自にデザイナーに資金援助して無償フォントを開発するこであろう。この点はカンボジアの情報技術への支援として重要である。カンボジアの経済状況を考えると、無償で美しいフォントが配布されることは、カンボジアの情報技術、ひいては教育や経済活動に大きく貢献するであろう。

3.フォントの開発
前述のようにカンボジアでコンピュータ教育をする上で、もっとも大きな障害となっているのがクメール語のUnicode化である。Microsoftの次期WindowsであるWindows Vistaで問題の多くは解決されるであろうが、無償提供されているフォントが読みにくいということはコンピュータを使用する上で大きな障害である。また、DTPで今まで無料で使用できていたフォントが使えなくなる点も、カンボジアの発展に大きな足かせとなる。このため、フォントの開発も求められている。

実際にフォント化するにはMicrosoftの新しい定義に適合したフォントを作るツールから開発するか、その技術を持っているところに発注しなくてはならない。

この分野を支援することで、カンボジアだけでなく、独自の文字を持った民族のフォントを開発して世界の情報化をすすめDigital Divideの低減に寄与する事ができる。また、フォントは一つの「文化」であり「芸術」であり、作成したフォントは何年にもわたって継続的に使用され支援が「見える形」で提供される。コンピュータによる情報化により、このような文化と芸術が失われることを防ぐ意味においてもこの分野への支援は重要である。

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