2007年7月1日日曜日

Fan Kids

2004年10月10日日曜日にプノンペン北部にある山寺に行きました*1。

左が湖、右が川になった道を北上すると、左の湖の向こうに小山が見えます。この小山が目的地でオッドン(またはウドン、アルファベット表記でOdongk)山といいます。同行したカンボジア人によると、地元の人しか行かないような観光地だそうです。プノンペン市周辺の一帯は全くの平地で、まれに巨大な岩石のような小山があります*2。そのような小山には決まって山寺があるようです。

麓の空き地が駐車場になっていて、そこに車を預けて昼食に出かけます。普通は早朝にここに到着して山に登ってから昼食だそうですが、到着したのが昼食時間です。麓にある露店で食べ物を買って、休憩所で食事をします。休憩所といっても我々が利用したのは雨よけ日よけのビニールシートを張って桟敷を置いただけです。

じつは、駐車場で車を降りてからこの休憩所に来るまで少年達がつきまとってきました。男の子だけでなく女の子もいます。しかし、彼らは物乞いではありません。何も言わずに黙々と団扇で扇いでくれます。団扇はヤシなどの葉を編んで作った物です。一度も洗ったことがなさそうな米漫画シンプソンズのTシャツを着た10才ぐらいの男の子は、私にねらいを定めたようです。

食事が終わって残り物を少年達に上げましたが*3、シンプソンズの少年は見向きもしません。こうなればお金を上げるしかなく、少年を呼んで500リエルを上げました。さらに、山寺に向かって出発するときに休憩所に残る女性を扇ぐという条件でさらに500リエルを上げます。これで、シンプソンズの少年を追い払うことができました。

山寺までの参道は石の階段になっています。石段には線香売りや物乞いがいますが、面白い商売をしている一団もいます。階段の踊り場に椅子を置き、階段で汗だくになった人を座らせます。その周囲を十人ぐらいの少年少女が囲み団扇で一斉に扇ぎます。これは涼しそうです。

頂上の山寺にたどり着き、お参りを済ませ、周辺の真っ平らな景色を眺めていると、団扇少女がやってきました。この少女は団扇だけでなく線香も売っていますし、青いプラスチックのバケツも持っていてなにやら入っています。いわゆる経営の多角化というやつです。

これはさすがに無視しようと思ったのですが、私のジーンズのポケットを指さしてなにやら言っています。よく見ると、ポケットからお金が覗いていました。少女はお金が欲しいという意味で言ったのかも知れませんが、追いはぎに遭いかねない状態を注意してくれたのかも知れません。いずれにしても、お金をやらないわけにはいきません。

お金を受け取ったのでその場を離れるかと思いきや、少女はプロ意識のある女性で山を下りるまで扇ぎ続けてくれました。何せ南国の真っ昼間の炎天下で、長い階段を下りるので異常に暑くなります。少女の団扇は有り難いことこの上なしです。もちろん、降りてからお金を追加しました。少女の日に焼けて垢にまみれた顔をよく見ると、可愛い顔をしています。元気すぎて地面に転がり落ちてしまったアプサラと言ったところでしょうか。

休憩所にもどるとシンプソンズの少年達は女性達となにやら楽しそうに話しながら扇いでいました。私が戻ると数人がかりで扇いでくれて、これがまた涼しい。少年達もプロ意識があって、私が車に乗るまで扇いでくれました。

団扇少年少女にはプロ根性があります。彼らに教育と仕事の機会があれば、カンボジアの将来はさらに明るくなるでしょう。

*1 本当は南部にある山寺に行く予定だったのですが、Phucomben(プチョンベン)という祭りの影響で大渋滞したために逆の北の山に向かうことになりました。川や山寺の位置から考えると、プノンペンは風水に基づいて決められた首都かも知れません。

*2 知人に高い山でどれくらいだとたずねると800程あると答えが返ってきました。「エッ、800mか?」と聞き返すと「800段」と笑っていました。プノンペンの人にとって山の高さは、山寺までの階段数なのかも知れません。

*3 食事を分け合って持って行く子供達の他に、水が入っていたプラスティック・ボトルを集めている少女もいます。彼女はボトルを地面に置いて、その上にピヨンと飛び乗ってポンッと音をさせてつぶします。ポンと良い音がすると、彼女はニコッと笑います。

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